やっちゃった芸術

すごいものを見た。東京近代美術館「痕跡」展。作品を作るプロセスそのものを作品にしたもの、描く行為からはなれて作品を作ってみましたよ的に穴をあけたり、焼いたり、足で絵の具をのばしてみたり、絵の具を投げつけてみたり、自分の体を絵筆に使ったりという作品――「描きました、ていうかやりました」的な、要するに作品に作者が過剰に存在しているといえばいいのか――を展示していたのだが、そのなかにウィーンアクションペインティングという一派があることを知る。ウィーンといえば美しいイメージがあったが、その一派はスカトロジックな芸術?をやらかした。教壇からしっこを撒き散らしたり、うんこみたいな絵の具で女性の体を塗りたくるとか、ひどいのなんの。その一派の一人(失念)が「美しいものは全て汚したい」とか言っていてこれまたすごいやと思う。このうんこしっこ絵画はアンディ・ウォーホルもやっていて、それはまるで公衆便所の便器の汚れと同じだった。あと、ひっそりとウォーホルの精液絵画もあった。あんまり見る人がいなかった。
この展覧会には「この部屋の展示物は感受性の強い方には刺激が強いため、ご了承ください」という注意書きのあるコーナーもあって、まあ確かに刺激は強い感じ。でも、マン・レイの「アンダルシアの犬」の眼球をかみそりで切るシーンのほうがもっと刺激が強かった。
同館では「河野鷹思展」もやっていた。札幌オリンピックのポスターの青色に気持ち良くなる。ああいう青色を最近は見なくなった。

夕方、大学の図書館でイプセンの「人民の敵」をコピーする。
そのあと古本屋をのぞいたら伊藤整の『氾濫』文庫版がある。おととしからずっと探してたのに今ごろひょっこりあらわれるとは。