中島京子『イトウの恋』

書き忘れてたこと。ひとつはシーザリオの米オークス制覇(7月3日)。日米オークス制覇ってこの先あるんだろうか、こんなこと。動画で見たら3コーナーあたりでもう先頭にたっていて簡単に勝っていた。相手が弱すぎなのではないか。あと英語の実況を聞く方法ってないのか。日本語はそれでいいけど、どんな感じなのか聞きたいじゃないですか。
もうひとつは松村達雄の逝去(6月18日逝去、28日に報道)。古畑任三郎の「村長の犯罪」の回の村長役が「私の松村達雄」。合掌。


歯医者に行ったあと(歯医者に行ってからあごが痛いのはなぜ?)、ぼーっとしたいのでDVDにとってあるNHKスペシャル「明治」第二回を見る。外国人の見た日本というやつで、お雇い外国人や、オールコックとかいった要人の日本像を紹介してた。で、イギリスの女性旅行家で『日本奥地紀行』を著したイザベラ・バードも出てきた。ああ、と思い、DVDを見たあと中島京子『イトウの恋』を読む。

イトウというのは伊藤亀吉という「通訳の元勲」と言われた横浜の通詞、ガイドの草分け。(いま調べたら、モデルは伊藤鶴吉(1857〜1913)という人らしい)彼は明治11年(1878)6月から9月までイザベラ・バード(作中ではI・B)のガイドとして横浜から北海道までを案内しているのだが、まあ年上のお姉さんに恋してしまうのですね。いつも一緒にいるわけだし。そんなイトウの手記がなぜか横浜の中学社会教師久保耕平の実家から出てくる。しかも手記は途中で消えている。郷土部の顧問でもある久保はイトウの血筋をあたるのだが、それは田中シゲルという人気劇画原作者(女)だったと。関心のないシゲルと歴史に夢中なんだがシゲルを巻き込んでしまった罪悪感を抱えてもいる久保はお互い齟齬をきたしながら、残りの手記をたどろうとする。シゲルがめんどくさがって読むのと同じ速度で、手記の内容が挿話的にはさまれていく。
あらすじ書くのヘタだな…。
まあそういうお話で、現代のほうの二人(久保とシゲル)の話はしずかに近づく感じでほほえましい。I・Bとイトウに関してはなんというか、個人的にタイムリーだったので、狂おしかった。読書というのは個人的な体験なんだなあとしみじみ。
実は途中で断念してた本だったが読み直してよかった。時空を越えて綾なす二つの恋、とか言えば座りはいいんだろうが、とにかくI・Bとイトウの恋がしみた。偶然の折り重なりだよ人生は。