綿矢りさの新作とか

綿矢りさ「You can keep it.」を読んだ。それから文藝賞三並夏平成マシンガンズ」も読んだ。で、感想。
綿矢のほうは、「蹴りたい背中」と箱組みは同じような気がした。主人公の男を「背中」の「にな川」に当てはめれば。それでもたとえばこんな箇所に綿矢りさらしさを感じる。

オーストラリアからの転校生は日本の言葉が分からないので算数の授業だけしか参加できなかったが、賢い子で計算が速く正確だった。しかしどこからどう見ても外国人だったので、こりゃいじめられるんじゃないかなと小学生の城島はなんとなく怖い気持ちで彼を遠くからみていたのだが、

城島とは主人公。自分がいじめられるのではないが、第三者がいじめられることを予感しての恐怖。その後の城島のスタンスをここで絶妙にほのめかしていて、いいなと思った。
とにかく、学級政治というものはこどものスタンスを決定する。こどもの深謀遠慮が学級のなかに渦巻いている。その確たる原因はいじめの温床である学級派閥であって、ほんと、個人的なことは政治的なことであって、大人がやってることも子供がやってることもみな政治なんである。
三並夏の「平成マシンガンズ」にも中学での学級政治が色濃く反映している。深謀遠慮な主人公が周りの顔色を見ながら、内面で饒舌になってる。話は最後までもっていくにはもっていくが、ずるずるっとしていてよみごたえはない。あと父親の愛人の口調とかそぶりとか、いかがなものか。しかし、15歳が15歳の感性で書いたこの小説はとにかく学級政治小説なので、それはそれで教育界とかに意義深いのかもしれないけど。
高橋源一郎綿矢りさ新作収録の『インストール』文庫解説をしており、かつ、文藝賞選考委員なので三並作品に選評をしている。「17歳にしか書けない小説」「15歳にしか書けない小説」とそれぞれにそんなことを言っていて、意地悪に笑ってしまった。