山中貞雄「人情紙風船」と前進座

一度見たのだが、そのときは「天城越え」の中村翫右衛門が出ているとか、市川莚司というヤクザの役やってるのは実は加東大介なんだとか、そういうことはまったく知らなかったので、今回改めてみるとおもしろい。とことん暗い話という印象だったんだが、そこそこに明るいところもあった。けど最後は真っ暗い。暗いねえと一人ごちてしまうほど。
前進座がオールキャストで出てる。キャストに市川だの坂東だのが多いんだが、それはつまりこういうことなんである。

http://www.zenshinza.com/infomration/rekishi/history.html

世界恐慌含む不景気が演劇界にもしわ寄せ。リストラの嵐。労働組合が旧来の歌舞伎劇を革新せんとする勢力と組む。その中心が翫右衛門、河原崎長十郎、中村鶴吉(3人とも映画に出てる鶴吉は金魚売。気付かず)。当時革新演劇人にはあの村山知義もいたと。長谷川伸も協力者。そして映画のほうでは山中貞雄が功労者。
でもこれが山中の遺作になるのである。