摩擦音鼻濁音バンドネオン

昨日、天王洲アートスフィア、菊地成孔「南米のエリザベステーラー」ホール公演。
席がど真ん中だった幸運に浸りつつ、菊地成孔の振りまく香水を嗅ぎつつのあっという間のライブであった。本当にあっという間でものたりないものであった。めずらしくのめりこんで聴いていたということかしらん。ほんとうに「じわ」が走ったのでびっくりした。それはアンコール前の最後の曲で《ルペ・ベレスの葬儀》。ピアノ(南博、大竹まことにそっくり)のマイケル・ナイマンの曲みたいな深刻な音のリズムの刻みとハープの硬質な合いの手を経て、サックスとバンドネオンとベースが複雑怪奇な旋律をユニゾン演奏するんだが、これには参った。そのうえでザザザッと盛り上がるんであるが、自然と鳥肌が立ったものである。
ゲストにカヒミ・カリィ内田也哉子
その日の朝、内田裕也が空き巣に入られて樹木希林にもらった腕時計が盗まれた、それを聞いた樹木希林が「帰ってらっしゃいよ」と内田に呼びかけるニュースをみててゲラゲラ笑ったんだが、まさか娘をその日のうちに目のあたりにするとは。カヒミはささやきボイスでいつものようなカサコソした歌。内田は南米のエリザベステイラーの詩をスペイン語なんだかで鼻濁音たっぷりに朗読。それにしても菊地は漫談家のようによくしゃべっていた。アルゼンチンの精神科には棒で患者をたたいて治療する前近代的なところと、ラカン派の精神科医がずらっとそろっているところが同居していて変でした、という話が面白かったけど。