怪奇美?

金曜日、イイノホールの東京落語会。トリは三笑亭可楽で「寝床」。となりの爺二人組が「先代の可楽の寝床聴きたかったねえ」と叶わぬ夢物語を語っている。8代目可楽っていうのはすごいすごいとよく聞くが、実は聴いたことがない。新聞の全面広告でたまに「三笑亭可楽全集」が広告されているけど、どんなかんじなのか。この日の可楽も思ったほど悪くはない気がしたけど。談志に名前だけ継ぎやがってと非難されたと愚痴ったりしつつ、プレスリーのブルーハワイを歌って、まくらとしていた。歌はうまいのね。
浅野いにおのスピリッツ短期連載「日曜、午後、六時半。」にずいぶん心動かされたので、「ソラニン」(全2巻)を読む。これまた、ツボを押されたかんじ。動く風景と動かない風景。
今月の6日(水)に駒場柳宗悦の家に行ってきた。水曜日だけ開放している。縁側のあるいい家。こんな家に住みたい。日当たり良好。「書斎のある家ください」とは夏帆だが、宗悦の書棚もそのまま保存してある。これがすこぶる面白い。棚にある本で気になったのはこんな本。神原泰『フューチュリズムダダイズム・エクスプレッショニズム』、今村太平『映画芸術の形式』、園頼三『怪奇美の誕生』。怪奇美って?
INAXギャラリーでやっている「内藤多仲展」もなかなか面白い。監修は橋爪紳也っぽい。内藤は東京タワー、名古屋テレビ塔通天閣を建てた早稲田の先生。早稲田の理工は松本和子教授のおかげで大暴落だが、こんな誇れる人もいたわけです。耐震構造の父と言われているらしい。真面目だったのか茶目っ気で言っているのか判断がつかないこんな歌を年賀状に書いて人に送っている。「君知るや壊れたためしまだ聞かぬ鉄骨入りの鉄筋のビル」。うーん。
17日(日)、ラーメンズときたろうが出ている舞台をみる。「泥棒役者」。シチュエーションコメディ。ある作家の家に入った泥棒が不意の来客に見つかり、ごまかしと勘違いが連鎖してなぜかみんな納得して進んでいく形。三谷幸喜の「バッドニュース☆グッドタイミング」を思う。ラーメンズってやっぱり肌に合わんな。
黒澤清「LOFT」。ラストのオチは完全に笑わせようとしているとしか思えない(感じとして、あえて昔のアメリカのB級映画とかの終わりを意識したような)。怪奇美? 鏡がたくさん出てきて、不在をテーマに?……なんて考えていたのがばかみたいな気になった。単純に見てればよかった。