しかし柳田泉は広辞苑に載っていない

柳田泉『随筆 明治文学1』(東洋文庫)の「はしがき」にこんなくだりがあり、わくわくする。

最初(自分の書いてきたものの=引用者注)切抜を揃へてみたら、何だか予定の頁数に達しさうもないやうに見えたので、附録として「饗庭篁村」の伝記を書かう、「官報時代の二葉亭四迷」を書かう、「維氏美学」の研究を書かうなどと考へてゐるうちに、頁数が次第に超過することが分つて
来たので新に書き加へる案をやめた。やめたといつても、此の集の附録にすることをやめたので、書くことは勿論止めはしない。

いきおいがある。書いて書いて書きまくってやるというところがほれぼれする。最後はこう締めくくる。

書名や引用句をつゝむ括弧が一重だつたり二重だつたりで、統一を失つてゐる。これは多くは原稿代りの切抜のまゝに従つて無理に統一しなかつたからだ。見苦しいといへば見苦しいが、何やら蓬々たる夏草のやうに自然なところもある。我慢していただかう。

はしがきなのに、薫るものがある。うっとり。
目次を読むと、わくわくする。「政治講談事始」「政治小説に現れたる国会選挙」「明治文壇に於ける俳諧精神」「明治以後の教育と外国文学」「自由民権意識に成る詩歌」……。


ポプラ社小説大賞」というの公募文学賞が始まるらしい。勢いあるポプラ社、なんと文学賞賞金としては史上最高の2000万円だとか。景気いい出版社というのも世の中にはあるんですねえ。