イギリスでは杉村太蔵は存在し得ない

個人的にとある政治学の先生を訪ねる。イギリスは候補者選びがすごい厳しいんだそうだ。論文はもちろん、ディベートや面接をくぐりぬけてやっと党の「候補者名簿」に載る。これは新人候補者名簿ということ。それから選挙が始まれば候補者名簿の中からまた選挙区への候補者としての選抜が始まる。そうして800人くらいの中から新人が2.5%くらい生まれるのがやっとという。要するに政治素人からポンと公募に応募→名簿に載る→当選という筋書きなんてありえない。候補者の候補者の段階でマニフェストを叩き込まれたり、スピーチの練習をさせられたり、非常にきびしい「しつけ」がなされるのだという。イギリスには杉村太蔵君は出てこないんですよ、という結論。
疑問もぶつけてみる。今回の小泉圧勝劇は従来の世論ではなく、たぶんに若年層へのネット世論が誘導を起こしてのものだったのではないか。ネットは詳しく分からないといながらも、師曰く、新聞や雑誌の活字を読まない層に、12日間という限られた日数の中で判断材料を与えるものはテレビしかない。しかもテレビ層は強いものに乗っかる傾向が強い。ディープインパクト単勝1.0倍じゃないが、強いものにとりあえず投票しておこうという判断が雰囲気として蔓延していたんじゃないか。投票後、これでよかったのだろうか、という虚無感に近いものがあったとすれば、まさに100円買って100円戻ってくるディープインパクトへの投票に近いものがある。と。
三浦展の『下流社会』(光文社新書)がバカ売れしてる。下流社会層なんじゃないですか、結局、テレビで判断し、強いものに乗っておこうという傾向をもつのは下流社会層なんですから、と問えば、フランスの極右ルペンが台頭したのも労働者階級がこぞって投票したからで、今回はそれに近いものがある。とのこと。おそるべし下流社会。その本の売れ方もまた。